「何億円調達しました!」は本当にすごいのか?経営者が見落としがちな“お金の本質” —
組織と仕組みづくりパートナー/中小企業診断士の蛯原健治です。
社長がいちいち言わなくても、社員が勝手に動いて利益が2倍になる組織作りのコツをお届けします。

最近、「◯億円の資金調達に成功しました!」というニュースや、
それをテーマにしたセミナーをよく見かけます。
正直に言うと、私はいつも違和感があります。
「この会社、まだ事業は軌道に乗っていないよね?」
「お客さんの課題は、もう解決されているの?」
「組織はまだまとまっていないのに…?」
そんな疑問が浮かびます。
組織づくりの現場に長く関わってきた立場として、
“調達=成功”という空気にはどうしても馴染めません。
● 資金調達は「成果」ではなく、「宿題の増加」
スタートアップの資金調達は、
いまの実力が評価されているわけではありません。
評価されるのは、
- 将来のストーリー
- 成長の可能性
- 市場の大きさ
- 経営チームの伸びしろ
つまり、“未来への期待値” です。
調達額が増えれば増えるほど、
組織は「期待に応えるための圧力」を背負います。
私はよく、
「調達とは、宿題を山ほど積み上げる行為」
と表現しています。
まだ何も証明していない段階で、
“これだけの成果を出してくださいね”と、
約束だけが積み上がっていくということです。
● 調達額が注目されると、組織に歪みが生まれる
組織開発の視点から見ると、
“調達額が評価軸になる”ことにはリスクがあります。
なぜなら、外向きの期待に合わせるほど、
内側の組織づくりが後回しになるからです。
- 話題性はあるが組織文化が育っていない
- 採用が急激に増え、マネジメントの許容量を超える
- 意思決定スピードが落ちる
- 内部のコミュニケーションが追いつかない
こうして事業より組織が先に壊れるケースを、
私は何度も見てきました。
● 中小企業の経営者が学ぶべきは「お金の集め方」ではなく「お金を活かす仕組み」
中小企業の現場に入っていて感じるのは、
本当に必要なのは“調達”ではなく、
お金を成果につなげる仕組みです。
たとえば、
- 会議の設計
- 目標の運用方法(OKR・MBO)
- 権限委譲の仕組み
- タレントマネジメント
- 改善サイクルの標準化
- 心理的安全性の土台づくり
これらの“組織の土台”が整って初めて、
お金は力を発揮します。
逆に、土台がない状態で多額の資金が入ると、
組織は崩壊リスクが高まります。
● 経営者の違和感は正しい
多くの中小企業の経営者は、派手さよりも
“現場の確かさ” をよく知っています。
- 今日の改善が回ったか
- チームが前に進んでいるか
- 顧客の課題を解決できたか
- 組織の対話が深まったか
- 次の一手が見えているか
こうした“地味だけど本質的な積み重ね”が、
企業の強さをつくります。
だからこそ、
調達額で盛り上がる風潮に違和感があるのは、
とても自然です。
組織の未来をつくるのは、資金調達ではなく、
日々の対話と改善の仕組みです。
● まとめ
資金調達はスタートラインにすぎません。
事業や組織が成功しているわけではありません。
本当に価値があるのは、
- 組織が自走する仕組み
- チームが学習する文化
- 顧客に選ばれ続ける改善循環
- メンバーが成長し合う関係性
こうした“見えにくいが強い力”です。
「何億円調達しました!」という話題に振り回されず、
経営者が見るべきは、
組織の内側にある本質です。
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